土壌汚染対策法の基礎
土壌汚染対策法とは
顕在化する土壌汚染の増加を背景に土壌汚染対策の法制化が求められるようになり、2002年5月29日、土壌汚染対策法が公布され2003年2月15日より施行され、2010年の大幅な改正の後、2017年から2019年にかけて段階を踏んでの改正がおこなわれました。汚染の可能性の高い土地について、有害物質を取り扱う施設の廃止時等の一定の機会をとらえて調査を実施すること、そして土壌汚染が判明し、それによって健康被害が生じるおそれのある場合には必要な処置を講じることを定めています。
「土壌汚染対策法の一部を改正する法律による改正後の土壌汚染対策法の施行について(平成31年3月1日付け環水大土発第1903015号)」(第9の3.検討)の示すとおり、法の施行後5年を経過した時点で、再び大幅な法改正が検討される可能性があります。
土壌汚染対策法の一部を改正する法律(平成29年法律第33号)附則第七条を以下に引用します。
第七条
政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、新法の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
土壌汚染対策法の目的
土壌汚染対策法は、土壌汚染の状況を把握して、人の健康被害を防止するために対策を実施することを目的としています。すなわち、有害物質を取り扱っている工場・事業場が、土壌汚染の有無が不明なまま放置され、例えば、住宅や公園などのような不特定の人が立ち入るような土地利用をすることによって、人への健康影響が生じてしまうことを防ぐことです。
土壌汚染対策法の対象となる物質:「特定有害物質」と健康リスク
土壌汚染対策法第2条では、「土壌に含まれることに起因して人の健康に係わる被害を生ずるおそれがあるもの」を特定有害物質として、トリクロロエチレンや鉛などの26物質を規定しています →詳しくは土壌の基準のページへ- 直接摂取リスク(含有量基準):
特定有害物質が含まれる汚染土壌を直接摂取するリスク - 地下水等の摂取によるリスク(溶出量基準):
汚染土壌からの特定有害物質が溶出した地下水等を摂取するリスク
土壌汚染対策法では、どのような土地が調査の対象となるのか
調査の対象となるのは次のとおりです- 有害物質を使用していた特定施設の使用の廃止時(3条調査)
- 3000m2以上の土地の形質変更の届け出の際に 土壌汚染のおそれがあると都道府県知事が認めるとき(4条調査)
ただし、現に有害物質使用特定施設が設置されている工場若しくは事業場の敷地、または法3条1項ただし書きによって調査猶予を受けた土地であっても、900㎡以上の土地の改変を行う場合は届出(調査)が必要となります。 - 土壌汚染による健康被害が生じるおそれがあると都道府県知事が認めるとき(5条調査)
土壌汚染調査の結果はどうなるのか
- 土壌汚染がないとき:結果を都道府県知事に報告して完了します
- 土壌汚染があるとき:土壌汚染が判明すると区域を指定され管理されます
- →区域の指定には「要措置区域」と「形質変更時要届出区域」の2種類があります
- →「要措置区域」とは 近隣への健康リスクがあると判断される区域で原則土地の形質変更はできません
- →「要措置区域」では 汚染拡散防止等の措置を取らなければなりません
- →「形質変更時要届出区域」とは 形質変更時に行政への届出が必要な区域です
- →区域の指定を受けると 土壌汚染を除去するまで指定が解除されずネット上にも公開されます
土壌汚染調査について
- 特定有害物質を使用する特定施設の廃止時の調査(3条調査)
- 土地所有者は特定施設の廃止の日から120日以内に調査をして報告しなければなりません
- →水質汚濁防止法と下水道法で届出している特定施設で 特定有害物質を使用している事業所が対象です
- →事業者は 特定施設の廃止の日から30日以内に廃止届を提出しなければなりません
- →事業所として継続使用する場合など 調査を猶予できる「ただし書き」制度があります
ただし、法3条1項ただし書きによって調査猶予を受けた土地であっても、900㎡以上の土地の改変を行う場合は「一定規模以上の土地の形質の変更届出書」の提出が必要です
- 3,000㎡以上の土地の形質変更の届け出(ただし、現に有害物質使用特定施設が設置されている工場若しくは事業場の敷地においては900㎡以上の土地の形質変更の届出)の際に土壌汚染のおそれがあると都道府県知事が認めるとき(4条調査)
- 土地の形質変更する30日前までに「一定規模以上の土地の形質の変更届出書」の提出が必要です
- →形質変更届を提出すると 行政は過去の記録・各種届を調査して土壌汚染のおそれを評価します
- →土壌汚染のおそれがあると評価されると 土地の使用履歴を調査して報告しなければなりません
- →地歴調査の結果 土地の改変部に汚染のおそれがあると評価されると土壌を調査して報告しなければなりません
- →地歴調査の結果 土地の改変部に汚染のおそれがないと評価されれば土壌の調査は不要です
- 土壌汚染による健康被害が生じるおそれがあると都道府県知事が認めるとき(5条調査)
- 飲用井戸から基準を超えて有害物質が検出されるなど 都道府県知事が健康被害があると認めたとき
- →汚染原因者を特定することが困難であるため 過去に実施された例はごく少数です
その他
- 自主調査の結果で土壌汚染が判明したときは 申告して区域指定を受けることができます(14条)
- 調査対象地を全項目について 区域指定を受けることで 土壌汚染調査を省略することができます(ギブアップ制度)
- 調査報告の義務は土地所有者にあります 借地人が事業者である場合も土地所有者が報告しなければなりません
当社が手がけた土壌汚染対策現場(自治体職員の立会い検査の状況)
事前準備と立会い検査などのため、余裕のある工程で工事を進めなければなりませんし、掘削後も立会い確認が終わるまで掘削状態を維持しなければなりません。
作業員の手待ち、また確認完了まで工事が止まりますので、費用と時間のロスは少なくありません。
対策完了後も官報に掲載されるまでは指定解除されませんので、対策後1~2か月は区域指定が解除されません。