要措置区域について
法第3条、もしくは法第4条の土壌汚染調査(正しくは土壌汚染状況調査)の結果、土壌汚染が認められたとき、健康被害のおそれがあると認められると、要措置区域に指定されます。(法第6条)
また要措置区域では、形質変更の原則禁止が定められています(法第9条)。
環境省HP
- 土壌汚染対策法
- 土壌汚染対策法施行令
- 土壌汚染対策法施行規則
- 環水大土発第100305002号(平成22年3月5日)環境省水・大気環境局土壌環境課長通知
- 環水大土発第1903015号(平成31年3月1日)環境省水・大気環境局長通知
- 土壌汚染対策法に基づく要措置区域・形質変更時要届出区域
要措置区域
土壌汚染状況調査の結果、土壌汚染が認められ、人が、直接的に汚染土壌を摂取するおそれがあるか、もしくは、間接的に地下水摂取によって健康被害が生じるおそれがあるとき、要措置区域に指定されます。(法第6条)
要措置区域に指定されると、汚染の除去等の措置を、一定の期間で実施するよう、土地所有者に指示が発せられ(法第7条)、法第7条8項では、実施措置が講じられていないときに、実施措置を講ずることを命じることができる、としています。
また、法第7条4項では、当該汚染除去等計画に記載された実施措置が環境省令で定める技術的基準に適合していないと認めるときは、その提出があった日から起算して三十日以内に限り、当該提出をした者に対し、その変更を命ずることができる、としており、講じられる実施措置の内容についても、厳しく監督されることとなります。
土地の形質変更の原則禁止
法第9条では、要措置区域内においては、何人も、土地の形質の変更をしてはならない。要措置区域での形質変更の原則禁止がさだめられています。しかし、第9条にも「ただし」書きがあり、実施措置と一体になって行われる形質変更は認められており、要措置区域内での建設工事ができないわけではありませんが、基礎杭の施工等には制約があり、安易に施工できません。
また、例外として認められている形質変更は次のとおりです。
・形質変更の対象の面積の合計が10㎡以上のときは、深さが50cm未満
・形質変更の対象の面積の合計が10㎡未満のときは、深さが3m未満
平成31年3月1日の環境省の通達の一部を引用します。
ウ.実施措置と一体として行われる土地の形質の変更
要措置区域は、健康被害のおそれがあることから汚染の除去等の措置を講ずる必要のある土地であるが、汚染の除去等の措置と一体となって行われ、かつ、その施行方法が汚染の拡散をもたらさないものであれば、汚染の除去等の措置の履行が放置されているわけでなく、汚染の拡散を伴わずに土地の活用可能性を確保することができるため、このような場合には、土地の形質の変更の禁止の例外としている(規則第43条第3号)。
健康被害の生じるおそれ
土壌汚染対策法は、溶出量基準、含有量基準に適合しない土地を、土壌汚染が存在する土地と判定します。
- 溶出量基準:有害物質が地下水に溶出し、その地下水を飲用して生じる健康のリスクを定めた基準
- 含有量基準:有害物質を含む土壌を、口や肌から直接摂取して生じる健康のリスクを定めた基準
通常、事業所の用地であれば、土壌汚染の存在する敷地に、関係者以外の立ち入りできませんので、含有量基準を超過している汚染土壌を、直接摂取する経路は遮断されています。このため、含有量基準不適合による土壌汚染が認められても、多くの場合は要措置区域に指定されません。
それに対し、地下水の流動を制限することはできませんので、調査時に地下水汚染が認められなくても、土壌溶出量基準不適合な状況は、将来にわたって地下水汚染が生じないとはいえません。
このため、汚染物質の性質によって地下水汚染が到達する範囲を定め、その範囲に飲用井戸がある場合は、要措置区域に指定されることになります。
地下水汚染が到達する範囲
地下水汚染が到達する範囲は、旧施行通知においては一般値として以下の表の数値を示していましたが、実際の具体的な到達距離においては、地層等の条件により大きく異なります。
そのため、環境省において、各条件に応じての地下水汚染の到達距離の計算ツールが公開されました。
地下水汚染が到達し得る距離の計算ツール
環境省の通告文には次のように記載されています。
平成31年3月1日の環境省の通達の一部を引用します。
「地下水汚染が生じているとすれば地下水汚染が拡大するおそれがあると認められる区域」とは、特定有害物質を含む地下水が到達し得る範囲を指し、特定有害物質の種類により、また、その場所における地下水の流向・流速等に関する諸条件により大きく異なるものである。この地下水汚染が到達する具体的な距離については、地層等の条件により大きく異なるため個々の事例ごとに地下水の流向・流速等や地下水質の測定結果に基づき設定されることが望ましい。
そのため、環境省において、場所ごとの条件に応じて地下水汚染が到達する可能性のある距離(以下「到達距離」という。)を計算するためのツールを作成し、環境省ホームページに公開することとした。当該ツールは、特定有害物質の種類、土質及び地形情報(動水勾配)の条件を入力することで到達距離を算出するものである。具体的な使用手順については、併せて環境省ホームページに公開するマニュアルのとおりであるが、条件の入力においては、土質が不明な場合は透水係数が最も大きい「礫」を選択するなどして、過小に距離を算出することのないようにされたい。
なお、旧施行通知においては、一般的な地下水の実流速の下で地下水汚染が到達すると考えられる距離として、以下の表に示す一般値を示していたところである。ここで、当該ツールによって算出される到達距離が汚染が到達するおそれのある距離を示すものであるものの、一般値が地下水汚染の到達距離の実例を踏まえて設定されたものであることを踏まえれば、当該ツールにより算出される到達距離が一般値を超える場合には、一般値を参考にして判断することが適当と考えられる。
特定有害物質の種類 | 一般値(m) |
---|---|
第一種特定有害物質(揮発性有機化合物) | 概ね1,000 |
六価クロム | 概ね500 |
砒素、ふっ素及びほう素 | 概ね250 |
シアン、カドミウム、鉛、水銀及びセレン並びに第三種 | 概ね80 |
罰則
土壌汚染対策法第65条から第69条に罰則が定められています。
要措置区域関連では、措置指示を講じる命令(法第7条第8項)の違反と、土地の形質変更の原則禁止の規定に違反(法第9条)したときは、一年以下の懲役もしくは、100万円以下の罰金という罰則が定められています。
汚染の除去等の措置に要した費用の請求
土壌汚染対策法第8条に、汚染原因者の費用負担の原則が定められています。
措置指示を受けた土地所有者と、汚染原因者が異なる場合、土地所有者が措置指示に要した費用を汚染原因者に請求することができるというものです。この請求権には民法同様の時効があり、請求されてから3年間、もしくは、措置を講じてから20年間のいずれかで、時効によって請求権が消滅します。
要措置区域の指定の解除
土壌汚染対策法第6条第4項に、要措置区域の指定の解除が定められています。
環境省の通達文では、土壌汚染の掘削除去、もしくは、オンサイトでの土壌汚染の浄化によって、要措置区域の指定が解除されるとされています。
また、通達文では、六価クロムについて、三価クロムに還元し無害化する措置も、「土壌汚染の除去」に該当するとしつつも、除去効果の持続性について、技術的に保証されていないことから、汚染土壌の不溶化と同じ扱いになります。その、現地での汚染土壌の不溶化は、矢板立て込みによる地下水の摂取経路の遮断と同様、汚染物質の除去には該当しないため、要措置区域から形質変更時要届出区域に指定が変更されます。