インターンシップ 4日目、5日目(野澤記)
野澤です。
今回は、自分の研究で扱っているふっ素について、
様々な項目で情報を整理しました。
ふっ素及びその化合物の考察
ふっ素の化合物は、歯磨き粉やガラスの表面加工、テフロン樹脂などに広く使用されている。
一方で、土壌汚染対策法では、ふっ素は特定有害物質に指定され、土壌溶出量基準、土壌含有量基準が定められている。
日本環境協会の「事業者が行う土壌汚染リスクコミュニケーションガイドライン」によると、ふっ素を継続的に飲み水によって体内に取り込むと、0.9~1.2mg/Lの濃度で12~46%の人に軽度の斑状歯が発生することが記載され、また、最近のいくつかの研究では1.4mg/L以上で骨へのふっ素沈着の発生率や骨折リスクが増加するとされている。
さながらにして、ふっ素は、人の健康維持に不可欠な微量元素でもあり、一定量の摂取が必要とされている。
下表に、ふっ素及びその化合物について、複数の視点で情報を整理した。
すなわち、ふっ素の毒性、体内への吸収と排出、環境への動き、環境基準値、ふっ素及び化合物の用途と特性、ふっ素が微量元素の6個の視点である。
結果、厚生労働省HPにおいて、ふっ化ナトリウム、ふっ化カルシウムは、水質汚濁防止法、土壌汚染対策法の対象とされているが、フロンR-113、ふっ化アンモニウム、ふっ化水素は、水質汚濁防止法、土壌汚染対策法の対象とされていないという興味深い情報も得られた。
強い共有結合であるため、基本的にイオン化しないフロン R-113は、水質汚濁防止法等の対象にならないものと察するところであるが、ふっ化アンモニウム、ふっ化水素がなぜ対象外なのかを今後の学習で明らかにしたい。
ふっ素の毒性等 ふっ素の毒性について(厚生労働省) フッ素の健康防止、1日最小必要量(厚生労働省) |
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毒性 | 斑状歯、骨折リスク増化 |
1日最小必要量 | 決まっていない |
ふっ素0.9~1.2mg/L | 12~46%の確率で軽度の斑状歯発生 |
ふっ素1.4mg/L以上 | 骨折リスク上昇、骨への沈着率増加 |
健康被害の防止 | ふっ素の上限摂取量1日mg/L以下 |
考察 ふっ素は、最近の研究では、1.4mg/L以上で骨折のリスクが高まるとされているが、厚生労働省では健康防止のためのふっ素の上限摂取量が1日4mg/L以下と定められている。 この値の相違については、相互に考察が示されていない。 |
微量元素としてのふっ素 微量元素とは(公益財団法人長寿科学振興財団) ふっ素欠乏症および中毒(MSD) |
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微量元素とは | ふっ素は微量元素であり、米国政府の食品栄養局では、歯の健康を保つために必要なふっ化物の1日当たりの適正摂取量を体重1㎏当たり0.05㎎としている。 微量元素とは、生命活動に不可欠な元素のうち生物の体内に保持されている量が比較的少ない元素のことで、種類としては、鉄、亜鉛、銅、クロム、マンガン、セレン、ヨウ素などがある。 微量元素が欠乏すると酵素のはたらきが起きなくなり、様々な症状を引き起こす。 (例)セレンが欠乏→心筋障害を起こす |
1日最小必要量 | 定まっていない |
1日の推奨量 | 成人で1.5 ~4.0㎎/日 |
ふっ素欠乏症 | 虫歯および場合によっては骨粗鬆症につながることがある。 |
ふっ素中毒 | 過剰なふっ素は歯および骨に蓄積し、ふっ素症を起こす。 |
考察 ふっ素は、生命活動に不可欠な元素であるが、1日の最小必要量が定まっていない。 しかしながら、ふっ素は飲料水などに含まれているため、実際に欠乏することは、ほぼないものと考えられる。 一方、ふっ素を過剰摂取するとふっ素中毒を引き起こすリスクが高まるため、1日の推奨量が定まっていると考えられる。 |
主なふっ素化合物 ふっ素及びその化合物 (厚生労働省) ふっ素およびふっ素化合物について(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社) フッ化ナトリウム(厚生労働省) 1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン (厚生労働省) 弗化水素 (厚生労働省) フッ化ナトリウムについて(昭和化学株式会社) フッ素およびフッ化化合物の基礎知識 (宮千代加藤内科医院) |
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ふっ化水素 HF | |
用途・特徴 ガラスの表面加工 ふっ素樹脂の原材料 代替フロンの原料 常温で無色透明の液体 融点19℃ 水溶液は硫酸に匹敵する強二塩基酸。 |
適用法令 高圧ガス保安法 化学物質排出把握管理促進法 毒物劇物取締法他 |
ふっ化アンモニウム NH4F | |
用途・特徴 シリコン酸化膜を除去する薬剤 潮解性結晶で、有毒 |
適用法令 化学物質排出把握管理促進法他 |
ふっ化ナトリウム NaF | |
用途・特徴 虫歯予防のため歯磨き粉などに含まれる。 無色、結晶。 融点992℃ 水溶液はアルカリ性を示し、ガラスを侵す。 |
適用法令 化学物質排出把握管理促進法 水道法 下水道法 水質汚濁防止法 大気汚染防止法 土壌汚染対策法他 |
ふっ化カルシウム CaF2 | |
用途・特徴 主にふっ化水素の製造原料として用いられる。 蛍石の主成分 |
適用法令 水質汚濁防止法 土壌汚染対策法他 |
ふっ素樹脂 | |
用途・特徴 ふっ素原子の特性である炭酸原子との強力な結合力を活かし、優れた耐熱性、耐酸化性を有する |
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フロンR-113(C2Cl3F3) | |
用途・特徴 冷媒 オゾン層破壊物質 |
適用法令 化学物質排出把握管理促進法 オゾン層保護法他 |
考察 厚生労働省HPによると、ふっ化ナトリウム、ふっ化カルシウムは、水質汚濁防止法、土壌汚染対策法の対象とされている。 しかし、フロンR-113、ふっ化アンモニウム、ふっ化水素は、水質汚濁防止法、土壌汚染対策法の対象とされていない。 |
ふっ素の環境での動き ふっ素の環境での働き(厚生労働省) |
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環境中に排出 | 主に水中にイオンとして存在 |
海水域中 | 比較的高濃度 |
温泉水、火山帯の地下水 | 高濃度で存在 |
考察 ふっ素は、海水域中に比較的高濃度で存在する。 かつて海だった地域は、ふっ素の濃度が比較的高いといわれており、ふっ素の濃度が基準値を上回っている地域もある。 |
体内への吸収と排出 ふっ素の吸収について (厚生労働省) |
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体内への吸収される要因 | 飲み物、食物 |
動脈、甲状腺に吸収 | 尿に含まれて排出 |
骨や歯に吸収 | ふっ素がほぼ100%その場に沈着 |
考察 ふっ素は、骨や歯に吸着するとほぼ100%沈着する性質により、カルシウムと結合し、歯のエナメル質を強化して虫歯を予防したり、骨を丈夫にする働きがあると考えられる。 しかし、ふっ素を過剰摂取すると、斑状歯、骨折リスク増化につながるので、注意が必要だと考えられる。 |
ふっ素の環境基準 ふっ素の環境基準 (厚生労働省) 土壌溶出量基準、土壌含有量基準の考え方(環境省) 第二溶出量基の考え方など(環境省) |
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土壌環境基準 | 0.8mg/L以下 | 人の健康保護と生活環境を保全するうえで維持することが望ましい基準 |
地下水環境基準 | 0.8mg/L以下 | 地下水の水質汚濁について人の健康保護と生活環境保全のために維持することが望ましい基準 |
水質環境基準 | 0.8mg/L以下 | 公共用水域の水質汚濁で人の健康を保護し及び生活環境を保全するうえで維持することが望ましい基準 |
土壌溶出量基準 | 0.8mg/L以下 | 特定有害物質が地下水に溶出し、その地下水を飲むことによる健康リスク |
土壌含有量基準 | 4000mg/kg以下 | 土壌(重量:g)の10倍量(容量:ml)の水で溶出させ、その溶出液の濃度について基準値を設定 特定有害物質が含まれる土を飲み込むことによる健康リスク |
地下水基準 | 0.8mg/L以下 | 地下水の水質汚濁で人の健康を保護し及び生活環境を保全するうえで維持することが望ましい基準 |
第二溶出量基準 | 24mg/L以下 | 土壌溶出量基準の3倍~30倍に相当するもので、汚染土壌の搬出に係る基準 |
水道法:水質基準値 | 水質基準値0.8mg/L以下 | 飲み水の安全性を確保するために水道法で基準を満たすことを義務付けた基準 |
労働安全衛生法:管理濃度 | 管理濃度0.5pp | 作業場所の空気中に含まれている有害物質の濃度を一定のレベル以下に保つための基準 |
考察 多くの基準値がmg/Lで定められているのに対し、労働安全衛生法の管理濃度の単位がppmである。 これは、管理の対象が作業環境の大気であり、温度25℃、一気圧の空気中における濃度であるためと考えられる。 土壌汚染対策法における溶出量は全ての特定有害物質に基準値がある。 一方、土壌汚染対策法における含有量は第二種特定有害物質にのみ基準値が設けられている。 |
ふっ素は、歯磨き粉などによく含まれていると知られているのですが、特定有害物質であることは、あまり知られていません。
ふっ素を過剰摂取すると斑状歯や骨硬化症の原因になりえます。
そこで、ふっ素の環境基準などが定められており、今回は、土壌溶出量基準、土壌含有量基準について考察しました。
土壌溶出量基準とは、地下水等経由のリスクのことで汚染土壌から特定有害物質が地下水に溶出し、その地下水を飲用することによる健康リスクのことです。
ふっ素の場合、70年間、1日2Lの地下水を飲用することを想定し、一生涯にわたりその地下水を飲用しても健康に対する有害な影響がない濃度として基準値を設定します。
土壌含有量基準とは、直接摂取によるリスクのことで、特定有害物質が含まれる汚染土壌を直接摂取することによる健康リスクのことです。
土壌溶出量基準の測定方法としてm、土壌(重量:g)の10倍量(容量:ml)の水で対象物質を溶出させ、その溶出液の濃度について 基準値が定められています。
自分は、今株式会社セロリとの共同研究である、貝殻由来の炭酸カルシウムをもちいての、ふっ化物イオンを回収する研究を行っています。
ふっ素化合物による基準不適合土壌を現地で安価に浄化するための研究で、掘削除去工法による高額な汚染対策工事費用の削減に貢献できるようにがんばりたいと思います。