代表の遠藤が環境新聞に取材を受けました。
これは、3月13日(水)に、東京都が都庁大会議室で開催する「第14回土壌汚染処理技術フォーラム」(第12回土壌汚染対策セミナーと同時開催)で、セロリと岩手大学・晴山渉助教、大東環境科学が、ワイン残渣等を利用した過硫酸法による揮発性有機化合物(VOC)汚染浄化の技術確立と実用化へ向けての取組みが、狭隘地におけるVOCの低コスト原位置浄化事例として晴山助教が研究成果を演題「ワイン残渣等を利用した過硫酸法によるVOC汚染の浄化 狭隘な土地における実証試験」で紹介することを受けての取材でした。
土壌汚染対策法(土対法)が初めて施行されて一躍脚光を浴びた土壌環境事業も16年が経過した。土壌環境事業を取り巻く状況も変化し、4月1日の改正土対法施行を契機に、これまであまり顕在化してこなかった狭隘地等への対応等や人材、地域差による土壌環境業界側の課題を指摘する声は少なくない。こうした課題を指摘し、取り組む業界関係者を取材した。(全2回)
土壌環境事業のこれからの課題(上)
エコビジネスライター 名古屋 悟 氏
狭隘地における土壌汚染対策
敷地境界付近、井戸本数の課題等
狭隘地はコストが合わず、また施主の資金的な課題もあるため、措置を見送ってきたケースは少なくない。技術的には可能な土壌環境事業者はいるものの、これまでは市場規模が見込めず、本格的に取り組むケースは少なかったからだ。しかし4月1日に施行される改正土壌汚染対策法により、900平方メートル以上の形質変更を行う有害物質使用特定施設では法に基づく届出義務が生じることから、狭隘地が顕在化し、新たな市場として本格的に乗り出す動きが出始めている。
「狭隘地こそ、より低コストで効果的な原位置浄化工法が必要になる」。こう語るのは狭隘地での案件を多数手掛けてきたセロリの遠藤哲哉社長だ。
掘削除去は高額になりがちな点が課題として指摘されるが、遠藤氏は土対法の指定区域を受ける狭隘地では指定解除に繋がらない場合もある点を課題に挙げる。
「隣地建屋が迫る狭隘地では境界付近への山留をギリギリに設置できず、汚染土が取り切れずに区域指定解除ができないケースもある」とし、「敷地境界に汚染がある場合、そこまで薬剤を浸透させてVOCを分解させることができる原位置浄化工法がコスト面も含めて有効になる」と話す。
課題解決のための原位置浄化技術
「その原位置浄化でも課題は残る」。原位置による促進酸化工法のうち、過硫酸工法の高効率化、低コスト化に向けた技術の研究開発を進める岩手大学の晴山渉助教はこう語る。「狭隘地では設置できる井戸本数も限られる。分解反応が速い工法では境界付近の汚染源に届く前に反応が終わり、届かせるために追加して薬剤を注入すればその分コストも増してしまう」。
晴山氏が研究開発する「ワイン残渣・ヤマブドウ果汁残渣を利用した過硫酸法によるVOC汚染浄化技術」は、この課題に応える技術として実用化を目指している。
過硫酸法は分解反応が比較的緩やかな点が特徴で広く効果を期待したい時には有利だが、一方で素早く分解を進めたい個所では不利になる。過硫酸の分解効果を促進させるには有機酸が存在することで効果が向上することは知られているが、市販の有機酸は高価でコスト増に繋がってしまう。晴山氏はその有機酸としてブドウに含まれる酒石酸に着目。ワイン残渣やヤマブドウジュース残渣を用いて過硫酸法のラボ試験で10時間後、過硫酸のみでは30%程度だったものが、酒石酸添加したものでは95%分解できた」と述べる。過硫酸法の浄化速度を低コストで入手できる酒石酸を用いることでコントロールすることが可能になった。実汚染現場での実証も行い、効果は確認済み。「狭隘な土地、コスト的な課題を考慮した対応が求められるからこそ、今後はこうした技術が必要になる」と晴山氏は語る。
都が狭隘地対策をテーマにフォーラム
国内で最も土対法に基づく区域指定申請等が多い東京都も狭隘地における対応を課題と捉えている。来月13日に都庁大会議室で「第14回土壌汚染処理技術フォーラム」(第12回土壌汚染対策セミナーと同時開催)を開くが、狭隘な土地でも施工可能で安価な処理技術を紹介することを目的に重金属及びVOC汚染土壌対策の事例を紹介するとし、狭隘地におけるVOCの低コスト原位置浄化事例として晴山氏の研究成果を紹介する予定としている。(続く)
【環境新聞2454号(平成31年2月27日付)掲載】