スクリュジャッキとスラストベアリング
土壌汚染調査で土壌試料を採取するとき、土壌試料を化学的に攪乱させないためと、汚染拡散防止の観点から、
無水での掘削が一般的です。
たとえば、コアチューブを使って土壌試料を採取するなら、コアチューブの体積分の土壌は、
コアチューブ内に取り込めない分は、孔壁に圧密することになり、わずか数mの掘削なのに、
コアチューブの周面摩擦は相当に高くなります。
また、わずか数mの掘削に大掛かりな設備を用意するのは、さまざまな面でのストレスが予想されます。
よって、取り扱い容易で安価なジャッキを作れないかと、長期テーマにしていますが、これがどうにも進まない。
油圧シリンダでジャッキを作れば、油圧ユニットが必要となり、開発目的に沿わないので、この方式はオミット。
ならばと、スクリュジャッキに目を向けていますが、失敗が続き、いまだ解答にたどり着けない。
今回の失敗はこれ。
平歯車の内径にねじ加工し、平歯車を回して押上力を得ようというやりかた。
平歯車には、直接荷重がかかるので、スラストベアリングでスムーズな回転を担保する作戦。
試作して社内試験して、押上力4トンは確保しました。
ついで現場に投入、コアチューブを思いきり打ち込み、さあ、上げてみよう。
順調に時間が過ぎ、目標達成かというころに異音発生、平歯車の回転が不調になってきて、ついには終了、また失敗です。
社内に持ち帰り、まずはスラストベアリングを点検しました。
外観も回転も異常が見当たらない。
ボールをマクロで点検、このくらいの倍率では正常に見える。
さらに実体顕微鏡の倍率を上げていくと、ボールの表面は、それなりに傷んでいましたが、
まあ、このくらいなら使用の範囲でしょう。
とすると、ボールを受けるレースに問題があるのか、と調査は進んでいきます。
材質はSCM440をHRC30に調質して、機械加工後にガス軟窒化で表面硬度はHv700の設計です。
硬さを当たりましたが、材質熱処理は正常です。
旋盤のヒキメも過大荷重を受けた変形はありません……と。
なんと最大荷重を受ける範囲は、摩擦でずれていた!
ボールが転がるレース表面が、旋盤のヒキメがなくなるほど。
そして、レースのエッジは外側に膨れるように変形している。
あ~
レースの材質を軸受鋼にして、キンキンに焼きをいれる?
メートルねじを、ボールねじ変更して摩擦低減を図るか??
うまくいかないジャッキ開発のお話でした。