25.4mmの世界にようこそ その1 プロローグ
メートル法という長さの決まりがあって、国際的な標準でもあり、日本でも、特殊なケースを除いて、メートル法に基づいて、長さ、面積、体積が表現される。
靴のサイズ、身長、100m走とか、日本の子供たちは、メートル法を教育され、メートル法とともに成長する。
16世紀末の日本、戦国時代であるから、それぞれの勢力エリアには、それぞれの思惑があり、思想や価値観も含め尺度は当然にしてバラバラである。そこに太閤検地という歴史的な事業があって、各地でバラバラだった、長さ、面積、重さといった、度量衡が統一された。
長い歴史をへて、明治の開花期にメートル法が導入され、尺貫法は廃止されたが、やはり物事には例外があり、たとえば不動産の業界では、「坪」という面積の単位が生き残っている。「何坪の土地」という表現が業界の常識で、「何平方メートルの土地」という表現はしっくりこないらしい。
身近なところでは、PCや携帯端末のディスプレイのサイズがメートル法で表記されていない。
例外はさておき、日本の子供たちは、小学校に入るやいなや、物差しをあてがわれて、算数の教育が徹底され、理系アレルギー如何に関わらず、「何センチくらいに大根を切って・・・」というように、メートル法が染みついている。
そのような日本の常識で教育を受けてきたが、社会に出て、いきなり、インチと出会い、今日もインチを相棒にして仕事をしている。
インチとの出会いは鮮明であった。
現場に投入されて早々、「2インチのホースを持ってこい」などといわれる。
ボーリングロッドにあっては、「4山のピッチで」などといわれる。
「大学出て、そんなこともわからないのか」と、どなられる、毎日。
インチってなに? What's inch? 不思議の国に迷い込んだ。
さて、インチに戻る。
1インチ=25.4mmである。
なにごとにも由来はある。
14世紀のイギリスの王様が、大麦の粒を縦に3粒並べた長さを1インチと決めたとか。
古代ローマで1フィートの12分の1と決めたという説もある。
しかし、今日の支配的な由来は、成人男子の親指の幅ということになっている。
試みに、ノギスを25.4mmに合わせて、親指に当ててみると、なるほど、となる。
しかしだ。
インチに寄り添いながら、社会人として生きてきたが、やはり性根はメートル法にある。
2インチのホースの内径は50mmであり、4山のピッチとは、1インチに4つのネジ山があることを意味していて、4山/25.4と表記され、すなわちピッチ6.35mmなのである。
つまり、経験とともに、メートル法への変換が早くなっただけなのだ。
25.4mmの世界にようこそ、今回はプロローグである。
数回にわたってインチの世界を堪能したい。