技術屋社長の独白
観測井戸・注入井戸を利用した透水試験
土壌あるいは地下水汚染を薬剤の注入で浄化を計画するとき、予定数量の薬剤を注入する必要時間や、注入した薬剤が拡散する時間を推定する必要があり、当然、砂や礫に富んだ地層では薬剤の移動速度は速いし、シルト層などは、あきれるほど移動しない。この地下水の流れやすさが透水係数であり、透水係数を求める試験が透水試験である。
透水係数は、フランスの技術者 ヘンリー・ダルシーが、1856年に上水道のろ過砂を使用して、いわゆるダルシーの法則を導き、地下水の流れやすさを標準化した係数である。
ダルシーの法則
v = k i
ここで v : 見かけの浸透流速(cm/sec)
k : 透水係数(cm/sec)
i : 動水勾配 (水頭差m / 距離m)
ダルシーの法則では、透水係数の単位は cm/sec で示されるが、わが国では、2009年にJISが改訂され、透水係数 k の単位が m/sec に変更されているので、注意しなければならない。
現場で観測井戸・注入井戸を利用した透水試験方法には次の2方法がある。
①非定常法
井戸管内の水位を、揚水もしくは注水して変化させ、時間経過おける水位の変化を測定し、時間と水位の変化によって透水性を評価する方法。
②定常法
井戸管内の水位を、継続的に揚水もしくは注水して変化させ、時間経過における水位の変化を測定し、井戸管内の水位が安定したときの揚水量もしくは注水量と時間によって透水性を評価する方法。
株式会社セロリでは、この試験方法が標準であり、以下に試験方法の概略図と、透水係数の算定式を示す。
定常法における透水係数の算定式
k=1.15Q/(π・H・L) ・ log(2L/D)
ここで k : 透水係数(m/sec)
Q : 揚水量(㎥/sec)
H : 安定時の水位の変位(m)
L : 試験区間(m)
D : 井戸管内径(m)
実施例
ある、シルト混じり砂層からなる現場での透水試験結果を実施例として示す。
シルト混じり砂層での透水試験結果
時間(分) | 管内水位(m) | 揚水量(L) | 透水係数計算 |
0 | 0.79 | 0.0 | 揚水量Q=0.0032/320=7.33*10-6 (㎥/sec) 水位の変位H=1.02-0.79=0.23(m) 試験区間L=3.0(m) 井戸管内径 D=0.0518(m) 透水係数k=1.15Q/(π・H・L) ・ log(2L/D) = 8.03×10-6(m/sec) |
1 | 1.00 | 0.44 | |
2 | 1.00 | 0.88 | |
3 | 1.06 | 1.32 | |
4 | 1.06 | 1.76 | |
5 | 1.02 | 2.20 | |
6 | 1.02 | 2.64 | |
7 | 1.02 | 3.08 | |
8 | 1.02 | 3.52 |