地下水対策
土壌汚染対策工事は、人の事業活動に由来する性質上、工場が立地しやすい沖積平野や臨海部、または地価の高い都市部での施工が多い傾向があります。
そうした、沖積平野や臨海部は、標高が低く地下水位が高いため、汚染土壌の掘削除去工事で、地下水が湧水することもあり、施工の障害となります。
地下水による掘削除去工事の障害の例
- 汚染土壌が地下水に接触し、地下水汚染を誘発させてしまうおそれがある。
- 地下水面以下に汚染土壌が存在するとき、地下水を排水しないと、汚染土壌を掘削できない。
- 水分の多い泥濘化した汚染土壌は、水分を除去しないと、運搬車両に積込みができない。
- 水分の多い泥濘化した汚染土壌は、飛び散りやすく、汚染拡散の原因になる可能性がある。
- 地下水によって、掘削範囲の壁面が崩壊しやすくなり、山留など付帯工事が増加する。
このように、地下水面より深い深度の汚染土壌の掘削除去工事は、多くの配慮が必要となり、施工コストを押し上げます。また、掘削除去工事を進めるためには、水中ポンプで排水しながら作業をしますが、排水する地下水に汚染が生じていないことを確認したり、下水道の使用許可が必要であったり、とても煩雑です。
国土交通省のホームページの資料から、地下水のトリビアをご紹介します。
地球上の水の総量は、1,385,984(1,000km3)という、比較や想像のできないボリュームです。その地球上の水の96.5%は海水で、大気中の雨、川や湖の水、地下水などの淡水は、3.5%しかありません。
3.5%の淡水うちの68.7%は氷河などの氷で、次いで地下水が30.1%、川や湖や大気の淡水はわずかに1.2%ということになります。
そう、驚くべきことに、私たちの目に触れない地下水は、川や湖や大雨の原因となる大気中の水分の合計量の30倍近くも存在していて、母なる大地の地下には、とてつもない量の地下水が存在しているのです。
国土交通省HP
国土交通省 土地・水資源局水資源部
「平成17年版日本の水資源について」参考資料第1章
地下水面の深さ、地下水位といいますが、地下水位は、事前のボーリング調査や、公開資料によって、確認しておく必要がありますが、雨期乾期で変動しますので、様子をみながら掘削を進めます。
地下水を確認しました。
周辺を掘削する前に、増し掘りして深度を下げて、水中ポンプで排水し、地下水位を下げます。
想定より浅い深度に地下水がありました。
環境省のガイドラインでは、掘削する底面より、地下水位が1m低い状況を維持しなければなりません。
まずは釜場と呼ばれる、貯水場を作って排水し、地下水位を下げ、そして汚染土壌の掘削除去に移行します。
地下水を下水道に排水するには、さまざまなルールがあります。
まずは、施工計画や排水方法等を提出して、地域の下水道を管理する行政窓口に、下水道使用許可を受けます。
泥分の多い地下水は、そのままでは下水に流せません。まずタンクに貯水し、泥分を沈降させ、上澄みをだけを下水道に流します。
泥分が排水されていないか、定期的に確認します。また、汚染物質の濃度が、排水基準を超えていないか、定期的にサンプリングし分析します。
下水道の使用量金は、下水道への排水量によって決まります。 この排水量の管理の方法は、自治体によって運用が違いますので、事前の協議が重要です。
この現場では、自治体の指導により、排水系統に水量計を設置して、排水量を計測しました。