四塩化炭素(第一種特定有害物質 揮発性有機化合物)
四塩化炭素は、常温では無色透明、わずかに甘い臭気がする液体で、19世紀には消火剤として利用された不燃性の高い物質です。
先の大戦における日本海軍の酸素魚雷の燃焼剤としても使用されるなど、戦前から軍事目的にも広く使われ、また、テトラクロロエチレンの普及以前は、ドライクリーニング溶剤としても使用された歴史がありますが、健康リスクが明らかになるとともに代替物質の利用が増え、1940年をピークに使用量は減少しています。
20世紀後半になると、四塩化炭素は、フロン類の製造原料、脱脂洗浄剤、殺虫剤として利用されてきましたが、四塩化炭素がオゾン層破壊原因物質であり、オゾン層保護の国際的な取り組みが進む中で、1996年の「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」の施行により、試験研究や分析用といった特別な用途を除き、原則として製造禁止になりました。
四塩化炭素の毒性など
引用・参考文献
「事業者が行う土壌汚染リスクコミュニケーションのためのガイドライン」
(公益財団法人 日本環境協会 平成29年3月発行)
発がん性については、マウス及びラットの実験で、肝臓腫瘍(肝細胞がん及び腺種)の発生が認められています。
疫学調査が多く実施されていますが、人の発がんと四塩化炭素を取り込むこととの関連を明確に示す証拠はありません。国際がん研究機関(IARC)は四塩化炭素をグループ2B(人に対して発がん性があるかもしれない)に分類しています。
人が四塩化炭素を体内に取り込む可能性があるのは、飲み水や呼吸によると考えられます。体内に取り込まれた場合は、変化しないまま、あるいは代謝物に変化し、呼気とともに吐き出されます。
なお、呼吸によって四塩化炭素を取り込んだ場合について、(独)製品評価技術基盤機構及び(財)化学物質評価研究機構の「化学物質の初期リスク評価書」では、ラットの実験におけるLOAELと大気中濃度の実測値を用いて、人の健康影響を評価しており、現時点では人の健康へ悪影響を及ぼすことはないと判断しています。
四塩化炭素は、成層圏オゾンを破壊することにより、間接的に人の健康へ影響を及ぼします。
オゾン層は太陽からの有害な紫外線を吸収し、地上の生態系を保護しています。オゾン層が減少すると地上に達する紫外線が増え、皮膚がんや白内障など、人の健康への影響が懸念されています。
四塩化炭素の基準値など
四塩化炭素(テトラクロロロメタン carbon tetrachloride) | |
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分子式:CCl4 分子量:153.82 比重:1.594(20℃)水溶解度:800g/L | |
土壌ガス定量下限値 (volppm) | 0.1 |
土壌溶出量基準 (mg/L) | 0.002 |
第二溶出量基準 (mg/L) | 0.02 |
土壌含有量基準(mg/kg) | 基準値はありません |
地下水基準(mg/L) | 0.002 |
毒性 | 麻酔作用、めまい、頭痛、肝・腎障害、発ガンの疑い |
用途 | フロンガスの製造、機械器具の洗剤、不燃性の溶剤、芳香族抽出用、ドライクリーニング用溶剤 |
その他 | 1940年をピークに消費減少、1996年以降、試薬等を除き製造が禁止されている |