1,1-ジクロロエチレン(第一種特定有害物質 揮発性有機化合物)
1,1-ジクロロエチレンは、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン等を親物質とする分解生成物質として、直接的に1,1-ジクロロエチレンを使用していない事業所であっても、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン等を使用していたときは、調査項目となります。
1,1-ジクロロエチレンの土壌・地下水基準は、平成26年8月に、0.02mg/Lから0.1mg/Lに改正されています。
分解生成物質 | 親物質 |
---|---|
1,1-ジクロロエチレン | テトラクロロエチレン トリクロロエチレン 1,1,1-トリクロロエタン 1,1,2-トリクロロエタン |
1,1-ジクロロエチレンは、常温無色透明で刺激臭の強い液体です。
工業的には、親物質である、トリクロロエチレンやテトラクロロエチレンのように、脱脂洗浄剤やドライクリーニング溶剤として使用されることは稀で、工業用に生産される1,1-ジクロロエチレンの大半が、塩化ビニリデン樹脂の原料として利用されています。
また環境省の情報によると、1,1-ジクロロエチレンの国内生産量はトリクロロエチレンを上回っています。
1,2-ジクロロエチレン | 44トン(国内生産量 1998年) |
1,1-ジクロロエチレン | 約60000トン(国内生産量 2001年) |
テトラクロロエチレ | 28615トン(国内生産量 2000年) |
トリクロロエチレン | 47745トン(国内生産量 2010年) |
1,1-ジクロロエチレンの毒性など
引用・参考文献
「事業者が行う土壌汚染リスクコミュニケーションのためのガイドライン」
(公益財団法人 日本環境協会 平成29年3月発行)
動物細胞を使ったいくつかの変異原性試験で代謝活性化を行った場合に、染色体異常が報告されています。
発がん性については、雄のマウスに腎尿細管腺がんを誘発した報告例がありますが、種などによる差があると考えられています。国際がん研究機関(IARC)では1,1-ジクロロエチレンをグループ3(人に対する発がん性については分類できない)に分類しています。ラットに1,1-ジクロロエチレンを2年間、飲み水に混ぜて与えた実験では、肝小葉中心性の脂肪変性が認められ、この実験によるBMDL10は体重1kg当たり1日4.6mgでした。
1,1-ジクロロエチレンの基準値など
1,1-ジクロロエチレン(1,1-Dichloroethene) | |
---|---|
分子式:C2H2Cl2/分子量:96.94/比重:1.2129(20℃)/水溶解度:2.42g/L(25℃) | |
土壌ガス定量下限値 (volppm) | 0.1 |
土壌溶出量基準 (mg/L) | 0.1 |
第二溶出量基準 (mg/L) | 1 |
土壌含有量基準 (mg/kg) | 基準値はありません |
地下水基準 (mg/L) | 0.1 |
毒性 | 神経衰弱、肝障害、視覚障害、知覚神経障害 |
用途 | 塩化ビニリデン樹脂の原料 |
その他 | 平成26年8月に土壌・地下水基準が、0.02mg/Lから0.1mg/Lに改正 |