クロロエチレン(第一種特定有害物質 揮発性有機化合物)
平成28年3月29日の環境省告示により、平成29年4月1日よりクロロエチレンが第一種特定有害物質に追加されました。平成13年のふっ素、ほう素が土壌環境基準に追加されて以来であり、土壌汚染対策法施行後は初めての項目追加となります。
クロロエチレンを分解生成物質とする親物質
テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、シスー1,2-ジクロロエチレン、1,1-ジクロロエチレンの6物質は、分解する過程でクロロエチレンを生成するため、土壌汚染調査の際は、クロロエチレンを分解生成物質として調査項目に加える必要があります。
クロロエチレンは、塩化ビニル、塩ビ、クロロエテン(chloroethene)、塩化ビニルモノマーと呼ばれる樹脂として知られ、1835年にドイツで発見された化学物質であり、ポリエチレン、ポリプロピレンについで3番目に生産量の多いプラスチックです。水道管、雨どい、床材など、建材として身近な存在であり、樹脂として安定した性質があるので、塩ビ製品が、クロロエチレンとして土壌に溶出して、土壌汚染の原因になるということは、可能性としては極めて低いと考えられます。
クロロエチレンは、甘い特徴的なにおいのする無色透明(常温)の気体で、ほぼ全量 が、ポリ塩化ビニル(塩化ビニル樹脂)や塩化ビニル系共重合樹脂の原料として使われています。
クロロエチレンの毒性など
引用・参考文献
「事業者が行う土壌汚染リスクコミュニケーションのためのガイドライン」
(公益財団法人 日本環境協会 平成29年3月発行)
動物細胞を使ったいくつかの変異原性試験で、染色体異常を示したと報告されています。また、労働者を対象とした疫学調査や症例報告の多くで、クロロエチレンが肝臓の血管肉腫の発生を増加させた と報告されています。国際がん研究機関(IARC)はクロロエチレンをグループ1(人に対して発がん性 がある)に分類しています。これらの発がん性に関する疫学調査の結果などに基づいて、有害大気汚染物質の指針値が設定されています。
体内への吸収と排出
人がクロロエチレンを体内に取り込む可能性があるのは、呼吸や飲み水によると考えられます。体内に取り込まれた場合は、血液を通して全身に運ばれ、クロロエチレンオキシドなどの代謝物に変化し、尿に含まれて排せつされます。クロロエチレンオキシドがクロロエチレンの変異原性や発がん性に関係していると考えられます。
クロロエチレンンの基準値など
クロロエチレンン(chloroethylene) | |
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分子式:C2H3Cl/分子量:62.5/比重:0.9106(20℃)/水溶解度:1.280mg/L(25℃) | |
土壌ガス定量下限値 (volppm) | 0.1 |
土壌溶出量基準 (mg/L) | 0.002 |
第二溶出量基準 (mg/L) | 0.02 |
土壌含有量基準 (mg/kg) | 基準値はありません |
地下水基準 (mg/L) | 0.002 |
毒性 | 急性毒性は低いが、高濃度暴露では麻酔作用、運動失調、痙攣、呼吸不全や重症の不整脈 |
用途 | ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン・ 塩化ビニル共重合体などの合成原料 |
土壌汚染のおそれ | トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンを使用する事業所、クロロエチレンを使用保存する事業所 |