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ベンゼン(第一種特定有害物質 揮発性有機化合物)

常温のベンゼンは、無色透明で引火性が高く、甘い香りのする物質であり、1825年に物理学者として有名な、イギリスのノーベル賞学者ファラデーによって、鯨油を熱分解したガスから発見されました。

似た性質をもつ4物質、ベンゼン (Benzene)、トルエン (Toluene)、エチルベンゼン (Ethylbenzene)、キシレン (Xylene) の頭文字をとってBTEXと呼ばれることもありますが、土壌汚染対策法の特定有害物質に指定されている物質はベンゼンのみで、ベンゼン以外の3物質についてはリスクが棚上げされています。

平成12年にガソリンに含まれるベンゼンの量が規制され、平成12年以降に生産されたガソリンには、ベンゼンによる土壌汚染のリスクがないとされています。しかし平成12年以前に(自主的にベンゼンレスのガソリンを生産していたメーカもある)のガソリンには、ベンゼンが含有されていたことから、3000㎡を超える形質変更を行う範囲に、平成12年以前に設置されたガソリン貯蔵施設が存在するときは、原則として法4条の調査対象になります。

また重油については、重油漏えい事故現場において、ベンゼンによる土壌汚染が認められていることから、重油を貯蔵・使用する施設の周辺の土地は、ベンゼンによる土壌汚染のリスクがあると評価すべきと考えられます。

豊洲の都市ガス製造工場跡地では、石炭から都市ガスを生成する過程で生じたベンゼンによる土壌汚染の問題が生じましたが、プラスチック、ゴム、医薬品、その他多くの化学物質の材料としてベンゼンは有効利用されています。

ベンゼンの毒性など

引用・参考文献
「事業者が行う土壌汚染リスクコミュニケーションのためのガイドライン」
(公益財団法人 日本環境協会 平成29年3月発行)

ベンゼンは、変異原性の試験で染色体異常が報告されており、総合的に判断して遺伝子に対する障害性があると考えられています。また、疫学研究において、ベンゼンが人に白血病を引き起こすことに 関して十分な証拠があるとされており、国際がん研究機関(IARC)はベンゼンをグループ1(人に対して発がん性がある)に分類しています。 この他、高濃度のベンゼンを長期間体内に取り込むと、造血器 に障害を引き起こすことが報告されています。

 

大気環境基準、水道水質基準や水質環境基準は、人がベンゼンを取り込んだ際の発がん性リスクから、 「生涯にわたってその値のベンゼンを取り込んだ場合に、取り込まなかった場合と比べて10万人に1人の 割合でがんに発症する人が増える水準」として設定されたものです。

たばこの煙にも0.153~0.208mg/㎥のベンゼンが含有されており、喫煙者の吐 き出す息や血液中のベンゼン濃度は、非喫煙者より高いことが報告されています。

ベンゼンの基準値など

ベンゼン(benzene)
分子式:C6H6/分子量:78.11/比重:0.8787(15℃)/水溶解度:1.8g/L
土壌ガス定量下限値 (volppm) 0.05
土壌溶出量基準 (mg/L) 0.01
第二溶出量基準 (mg/L) 0.1
土壌含有量基準 (mg/kg) 基準値はありません
地下水基準 (mg/L) 0.01
毒性 麻酔作用、造血組織障害、白血病、めまい、嘔吐
用途 合成原料(染料,合成ゴム,合成洗剤,有機顔料,香料,ナイロンなど)、防虫剤、防腐剤(PCP)、燃料(混入)、油脂、抽出剤、石油精製
土壌汚染のおそれ ガソリンスタンド、重油貯蔵施設など
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