1,2-ジクロロエタン(第一種特定有害物質 揮発性有機化合物)
1,2-ジクロロエタンは、常温で無色透明の液体で、環境省の発表によれば、平成12 年における国内生産量は3,430,642t、輸入量は416,711t、輸出量は29,465tで、主な用途は、合成原料(塩ビモノマー、エチレンジアミン、ポリアミノ酸樹脂、イオン交換樹脂)、洗浄剤(フィルム)、溶媒(有機合成反応、ビタミン抽出)、殺虫剤、薫蒸剤、となっています。
1,2-ジクロロエタンの毒性など
引用・参考文献
「事業者が行う土壌汚染リスクコミュニケーションのためのガイドライン」
(公益財団法人 日本環境協会 平成29年3月発行)
1,2-ジクロロエタンは、ヒトリンパ球を使った変異原性の試験などにおいて、陽性を示したと報告されています。発がん性については、ラットとマウスに高濃度の1,2-ジクロロエタンを含む空気を104週間吸入させた実験では、ラットでは乳腺のがん、乳腺や皮下脂肪の線維腫などが、マウスでは肝臓の血管肉腫、乳腺のがん、肺細胞上皮のがんなどが認められています。また、ラットに高濃度の1,2-ジクロロエタンを78週間、口から与えた実験では、雄で前胃の扁平上皮がんと循環器系での血管肉腫、雌で乳腺がんの発生率の増加が認められています。
これらの実験結果に基づいて、有害大気汚染物質の指針値、水道水質管理目標値や水質環境基準は、「生涯にわたって継続的にその濃度の1,2-ジクロロエタンを取り込んだ場合に、取り込まなかった場合と比べて10万人に1人の割合でがんを発症する人が増える水準」に相当する濃度として設定されています。
人の発がん性に関しては、発がん性の可能性があるものの、人の疫学調査では十分な知見が得られておらず、国際がん研究機関(IARC)は1,2-ジクロロエタンをグループ2B(人に対して発がん性があるかもしれない)に分類しています。
1,2-ジクロロエタンの基準値など
1,2ジクロロエタン(1,2-Dichloroethane, DCE) | |
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分子式:C2H4Cl2/分子量:98.96/比重:1.2351(20℃)/水溶解度:8.69g/L | |
土壌ガス定量下限値 (volppm) | 0.1 |
土壌溶出量基準 (mg/L) | 0.004 |
第二溶出量基準 (mg/L) | 0.04 |
土壌含有量基準 (mg/kg) | 基準値はありません |
地下水基準 (mg/L) | 0.004 |
毒性 | 麻酔作用、肝・腎障害,循環器系損傷 |
用途 | 塩ビモノマー原料、エチレンジアミン、合成樹脂原料、フィルム洗浄剤、殺虫剤、医薬品(ビタミン抽出)、くん蒸剤、イオン交換樹脂 |
その他 | 発火の危険性があります |