水銀及びその化合物(第二種特定有害物質 重金属等)
水銀は、唯一の常温液体の金属。-38℃という低温で固体から液体になり、常温で揮発することから、汚染土壌の運搬に際し袋詰めが必要です。
水銀は、紀元前から顔料として利用され、各種電極や金・銀などの選鉱材料、血圧計、体温計、温度計などの計器類、水銀灯、蛍光灯、虫歯に詰めたりするアマルガムにも使用されましたが、有害性が指摘され近年使用量が減少しています。
また水銀は、その形態から、古代より不老不死の薬と信じられ、秦の始皇帝の死因は、水銀の飲用による水銀中毒と伝えられています。さらに、水俣病、第二水俣病の原因物質が、メチル水銀であることも知られています。
主な水銀化合物(環境省資料より抜粋)
物質名 | 化学式 | 質量 | 主な用途 |
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塩化水銀(II) | HgCl2 | 271.52 (g/mol) | 水に溶けやすく、常温で白色の固体です。殺菌剤や防腐剤、実験用試薬や 合成樹脂製造の際の触媒などに使われています。 |
酸化水銀(II) | HgO | 216.59 (g/mol) |
常温では固体で、赤色と黄色の2種類があります。磁器顔料の希釈剤、試薬 の触媒などに使われています。 |
塩化メチル水銀 | CH3CIHg | 常温で白色の固体で、試薬として使われています。なお、有機水銀中毒 として知られる水俣病は、アセトアルデヒドの製造過程で触媒として使われていた無機水 銀化合物から塩化メチル水銀が副生され、これを処理しないまま排水として川や海へ排出 したことから起きたものです。 |
水銀及びその化合物の毒性など
引用・参考文献
「事業者が行う土壌汚染リスクコミュニケーションのためのガイドライン」
(公益財団法人 日本環境協会 平成29年3月発行)
水銀は脳の中に蓄積しやすく、体内で酸化反応を受ける前に脳に移行すると水銀によって中枢神経障 害を起こすおそれがあります。口から水銀を取り込んだ場合について、子どもが体温計の水銀を誤って飲み込んだ事故では影 響はほとんどみられなかったと報告されています。塩化水銀(II)の場合、動物に長期間、口から取り込 ませたいくつかの実験では、尿細管の変性及び壊死、腎症などの重い腎臓障害などが報告されています。
有機水銀化合物は、無機水銀化合物に比べて毒性が強いとされ、メチル水銀は、神経細胞を変性、壊死させると考えられており、特に胎児への影響が大きいとされています。
水銀及びその化合物の基準値など
水銀(mercury) | |
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原子番号:80/元素記号:Hg/分子量:200.59/比重:3.534/融点:-38.83℃ | |
土壌溶出量基準 (mg/L) | 水銀として0.0005 かつアルキル水銀が検出されないこと |
第二溶出量基準 (mg/L) | 水銀として0.005 かつアルキル水銀が検出されないこと |
土壌含有量基準 (mg/kg) | 15 |
地下水基準 (mg/L) | 水銀として0.0005 かつアルキル水銀が検出されないこと |
アルキル水銀(R-Hg) は、水銀を含む有機水銀化合物の1つで、水銀が、メチル基、エチル基などの、アルキル基と結合した化合物の総称。アルキル水銀は人の細胞が吸収しやすく、水俣病の原因物質といわれている。 |