チオベンカルブ(第三種特定有害物質 農薬等)
チオベンカルブは、JA系列の農薬会社・クミアイ化学工業株式会社が開発した除草剤で、日本での農薬登録は1969年、一年生雑草用の除草剤です。
チオベンカルブの別名として、N,N-ジエチルチオカルバミン酸S-4-クロロベンジル、ベンチオカーブ、ベンチオカルブなどがあります。
農林水産省のHP
・水質汚濁性農薬(農薬取締法施行令)
・農薬取締法
チオベンカルブの用途(厚生労働省HPより引用)
チオカーバメート系の除草剤で、水田の田植時の前後においてノビエ、マツバイなど雑草の防除を目的に使用される。
チオールカーバメート系の茎葉兼土壌処理剤でイネに対する薬害が少なく、ノビエに対して特異的な殺草効力を持つ。
ベンチオカーブ単剤を土壌処理剤として使用した場合、ノビエをはじめとする一年生雑草、ミズガヤツリ、ホタルイ、マツバイなどに有効である。主に幼芽部から吸収されて、雑草体内を移行して生育点に作用するが、根よりも幼芽部の伸長を強く抑制する。本剤の阻害部位はタンパク質合成阻害とオーキシン活性阻害であると考えられている。土壌中の移行性は中程度で、残留性はやや大きい。(農薬ハンドブック)
チオベンカルブの毒性など
引用・参考文献
「事業者が行う土壌汚染リスクコミュニケーションのためのガイドライン」
(公益財団法人 日本環境協会 平成29年3月発行)
チオベンカルブは、マウスの細胞を使った染色体の異常を調べる試験で陽性を示したと報告されています。動物試験によると、チオベンカルブを取り込むことによる影響は、主に肝臓と腎臓に認められ、発がん性や催奇形性は認められませんでした。ラットにチオベンカルブを2年間、餌に混ぜて与えた実験では、体重増加の抑制や血中尿素窒素(腎機能の指標)の増加などが認められ、この実験結果から求められる口から取り込んだ場合のNOAEL(無毒性量)は体重1kg当たり1日0.9mgでした。
この実験結果から、2007年に食品安全委員会は、チオベンカルブのADI(一日許容摂取量)を体重1kg当たり1日0.009mgと再評価しました。これは従来のADIと同じ値です。水道水質管理目標値や水質環境基準は、このADIに基づいて算出されています。なお、2010年に食品安全委員会は評価書第2版を公表しましたが、ADIに変更はありません。
チオベンカルブの基準値など
チオベンカルブ(thiobencarb) | |
---|---|
化学式:C12H16ClNOS/モル質量:257.78g/mol/水溶解度30mg/L | |
土壌溶出量基準 (mg/L) | 0.02 |
第二溶出量基準 (mg/L) | 0.2 |
土壌含有量基準 (mg/kg) | 基準値はありません |
地下水基準(mg/L) | 0.02 |
好気的半減期は12日、嫌気的には40日で分解しなかった報告がある(環境省HPより引用) |