鉛及びその化合物(第二種特定有害物質 重金属等)
鉛は、融点が327℃と低い柔らかい金属であるため、加工しやすいことから、古代エジプトから多用された金属であり、古代ローマ人が羊皮紙に鉛で文字を書いたことが、鉛筆の語源となっています。
鉛の人体への有害性は、古代ギリシャのヒポクラテスが、紀元前370年ころにはすでに指摘しています。 しかし鉛はさまざまな用途に使用され、ワインの添加剤にも使われていたことから、ベートベンの髪には多量の鉛が検出されたといわれ、白粉に鉛白が使用されていたことから、役者には鉛中毒者が多くいたともいわれています。
20世紀以降は、鉛蓄電池の電極としての使用、ガソリン添加剤としての使用が拡大しましたが、日本では1986年には有鉛ガソリンの使用が禁止され、さらに2006年のRoHSにより特定有害物質として使用が制限され、消費量は減少しています。
鉛と主な鉛化合物(環境省資料より抜粋)
物質名 | 化学式 | 分子量 | 主な用途 |
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鉛 | Pb | 207.2 | 鉛管、釣りのおもりなどウエイト材、放射線遮断材、銃弾、精錬材 |
一酸化鉛 | PbO | 223.2 | 蛍光灯・ブラウン管などのガラス添加剤、黄丹粉、顔料 |
二酸化鉛 | PbO2 | 239.2 | 鉛蓄電池の電極、サッシ用パテ、プラスチック硬化剤 |
硝酸化鉛 | N2O6Pb | 331.21 | マッチ、爆薬の減量、無電解メッキ安定剤、殺鼠剤、感熱紙被覆剤 |
クロム酸鉛 | PbCrO4 | 323.194 | 黄色顔料(黄鉛)、防錆塗料、六価クロム化合物でもある |
テトラエチル鉛 | (C2H5)4Pb | 323.44 | ガソリンの添加剤(アンチノック剤)、有鉛ガソリン |
四酸化三鉛 | Pb3O4 | 685.6 | 赤色顔料、光明丹、防錆塗料(船底の赤い防錆塗料) |
チタン酸ジルコン酸鉛 | Pb(Zr,Ti1)O3 | 303.1 | 圧電材料、代替え材料がなくRoHSの適用免除対象物質 |
ホワイトメタル | Sn-Sb-Pb | - | 錫と鉛を主材料とした合金、軸受材、ペンダントなどの装飾品素材 |
はんだ | Sn-Pb | - | 錫と鉛を主材料とした合金、はんだ付け材料、ろう接材料 |
鉛及びその化合物の毒性など
引用・参考文献
「事業者が行う土壌汚染リスクコミュニケーションのためのガイドライン」
(公益財団法人 日本環境協会 平成29年3月発行)
国際がん研究機関(IARC)は鉛の無機化合物をグループ2A(人に対しておそらく発がん性がある)に分類しています。また、金属鉛及び有機鉛については発がん性の報告が不十分で評価できないとして、鉛そのものをグループ2B(人に対して発がん性があるかもしれない)、鉛の有機化合物をグループ3(人に対する発がん性については分類できない)に分類しています。
鉛及びその化合物の基準値など
鉛(lead) | |
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原子番号:82/元素記号:Pb/原子量:207.2/密度:10.66g/cm3 | |
土壌溶出量基準 (mg/L) | 0.01 |
第二溶出量基準 (mg/L) | 0.3 |
土壌含有量基準 (mg/kg) | 150 |
地下水基準(mg/L) | 0.01 |
・鉛の急性中毒:嘔吐、腹痛、ショック ・鉛の慢性中毒:消化器症状、神経症状、貧血 |